樹状細胞ワクチン療法
樹状細胞を用いて腫瘍細胞に特異的な免疫反応を賦活化させる治療法を樹状細胞ワクチン療法といいます。
GM-CSFやIL-4を用いて末梢血から分離した単球を樹状細胞に分化させ、これに抗原を取り込ませて投与するものです。抗原としては自家の腫瘍細胞や腫瘍組織から調整した抗原や既知の抗原を用いるものまで多種あります。人体(主に皮下)に投与された樹状細胞は抗原を取り込んだまま所属のリンパ節にリンパ管を通って移動し、ここで抗原提示を行い特異的なCTLやヘルパーT細胞を活性化します。この場合、この治療を受けるにはがんによる免疫抑制が強すぎると効果はありませんので、術後の再発予防や初期のがんに有効と考えられます。
CTL療法
自家狩猟細胞に特異的なCTLを体外でつくり、これを治療に用いるのがCTL療法です。これには自分の腫瘍細胞と樹状細胞、リンパ球などが必要で通常はなかなか手に入りにくいため、一般治療としては難しい面があります。手術などで腫瘍が手に入った場合にはこれを冷凍保存しておき、再発の場合に使うこともありますが、術後の再発予防としてCTL療法を行うこともあります。
生きた腫瘍細胞を使う場合には体内で増殖しないように、抗がん剤や放射線で処理してから樹状細胞と混合培養します。このあと樹状細胞に末梢血由来のリンパ球を加えて1~2週間培養し、CTLとして使います。腫瘍細胞にMHC classⅠ分子が発言していない場合にはCTL療法はできませんので、この場合には他の治療法を選択する必要があります。
・αβT細胞療法
T細胞レセプターの抗体であるCD3を用いると、αβT細胞が増殖してきます。これを用いるのがαβT細胞療法で、非特異的にNKG2Dが腫瘍細胞上のMICA/Bを認識して攻撃します。この方法は比較的簡単に大量のリンパ球が手に入るため広く普及してきました。
・γδT細胞療法
リンパ球をアミノビスフォスフォネートの存在下で培養するとメバロン酸代謝経路が途中でブロックされてIsopentenyl Pyrophosphate(IPP)が細胞表面に表出され、これをγδT細胞のレセプターが認識して活性化し大量のγδT細胞が得られます。これを用いた療法がγδT細胞療法です。
<腫瘍細胞の認識機構>
αβT細胞の中でも特異的に働くものは腫瘍細胞のMHC classⅠ抗原上のペプチドを認識して殺細胞効果を発揮しますが、非特異的に働くαβT細胞では細胞膜上のMICA/BレセプターであるNKG2Dが腫瘍を認識して攻撃します。
このほかγδT細胞も同様にNKG2DがMICA/Bを認識して攻撃します。また、γδT細胞はCD3T細胞上のγδレセプターが腫瘍細胞のIPPを認識して腫瘍細胞を攻撃することもあります。