がん遺伝子治療がん遺伝子治療

がん遺伝子治療

当社団ではがん遺伝子治療の研究開発を支援しています。遺伝子治療の重要な3つのポイントに沿って、どのような仕組みの遺伝子治療なのかをご紹介します。

遺伝子タンパク
1.ベクター(運び屋)として何を使用するのか?

遺伝子治療の効果には治療タンパクのベクター(運び屋)の選択が重要となります。ベクター選択の判断基準として、染色体への組込み、分裂・非分裂細胞への導入、発現(効果があらわれること)などがあります。

近年、「レンチウイルス」の機能性と安全性が再確認されています。このベクターは、発現期間が長く、細胞分裂のどの期間にも導入可能で、核内にも入るため、染色体への組込みも期待できます。

がんの治療には「レンチウイルス」の使用が効果的と考えられます。また、最新の知見として非ウイルスベクターやNanoparticleといったベクターが盛んに研究開発され、高い効果が報告されています。

主なベクターの種類
主なベクターの種類

扱いやすさの面からアデノウイルスを用いる医療機関もありますが、最新の研究によっても染色体への組み込みが十分かつ、効果があらわれる期間が長いことから、がんの治療にはレンチウイルスベクターの使用が最も効果的と考えられます。

2.何を持ち込んで治療するのか?

がん遺伝子治療には、2つの目的があります。一つ目は正常な細胞が本来もっているアポトーシス(細胞の自然死)の機能を発動させ、がん細胞を自滅に追い込むことです。二つ目はがん細胞の無限増殖そのものを止めることです。

当社団の提携医療機関では、“PTEN”、“P16”、“p53”という3種類のがん抑制遺伝子と“CDC6shRNA”というがん抑制因子でがん細胞の増殖・不死をストップさせるような機能を持つ各種の遺伝子治療法の臨床的研究を行っています。

効果1:細胞分裂の停止

⇒ CDC6shRNA:がん細胞の分裂を一時的に停止に導く

効果2:増殖シグナルの阻害

⇒ PTEN/P16:がん細胞の増殖のシグナルを阻害する

効果3:がん抑制遺伝子RBを活性化する。

⇒ 上記3つを併せて:がん抑制遺伝子RBを活性化する

効果4:不老生存に対し

⇒ p53:がん細胞を正しくアポトーシス(細胞の自然死)に導く

3.それをどう発現させるか?

どんなによいがん抑制遺伝子を持ち込んでも、効果が現れなければ意味がありません。

ベクターにレンチウイルスを使用することで、目的遺伝子が核内に挿入され、その遺伝子が産生するタンパク質によって、治療効果をあげています。

また、テロメラーゼが活性化しているがん細胞に対して、テロメラーゼの逆転写酵素をプロモーターとして使用し、がん細胞を半特異的に認識することで有効的に機能させます。

※がん遺伝子治療は最新の治療法です。使用する遺伝子治療用ベクターは現時点(2016年7月時点)では未承認です。

テロメラーゼ活性

ストレスに強い正常幹細胞の増殖においても、テロメナーゼ活性ががん同様に高くなっています。今回の遺伝子治療用ベクターを散布したところ、増殖していた幹細胞の50%で細胞分裂が止まり、細胞が死滅状態に。遺伝子治療用ベクターが増殖を抑える効果があることがわかります。

国際遺伝子免疫薬学会のページトップへ戻る