癌性腹膜炎・腹膜播種/癌性胸膜炎・胸水に対するCART遺伝子複合治療
お腹にある臓器をつつむ膜を腹膜(ふくまく)といいます。腹膜は、臓器と臓器の摩擦を少なくするために腹腔(ふくくう)とよばれる隙間をつくっています。腹腔には通常20〜50mLの水が入っていますが、さまざまな病気の影響で通常よりたくさん貯まった水、または状態を腹水といいます。
1.肝硬変などによる血液中のアルブミンの低下
肝硬変などにより、アルブミン※1をつくる機能が低下します。血液中のアルブミンが少なくなると、血管の外に漏れ出た水分を血管内に戻すことができなくなり、腹水がたまります。
※1 血液中のタンパク質の一つに「アルブミン」があります。アルブミンは、血管中に水分を保ったり、水分を血管の中に引き込む働きをしています。
2.病気やがんなどによるもの
炎症性の病気やがんなどにより、血管から血液成分や水分がしみだしやすくなり、腹水がたまります。
一般的な治療としては、ベッドで安静を保ちます。
食事療法:2〜5g/日の塩分制限や、1L/日以下の水分摂取制限を行います。
薬物療法:利尿薬により水分を体の外へ出します。不足したアルブミンをおぎなうため、アルブミン製剤を点滴により投与します。
以上のような治療を行っても、改善しない腹水を難治性腹水(なんちせいふくすい)といいます。
【癌性腹膜炎による腹水】
病理学的に腹水中に癌細胞あるいは腹膜に癌組織を認め、腹膜表面に散在する複数の癌病巣あるいは広範囲の癌病巣を認めるような場合、一般的にこのような癌性腹膜炎患者では腹水の増加を認めます。癌が存在し、極端な低栄養状態や肝機能障害がなければ、大量腹水の原因は癌性腹膜炎と考えられます。しかし、癌の性格によっては腹水増加を全く伴わない癌性腹膜炎も稀ではありません。この場合は、 PET-CT検査を受ければ、腸管表面の癌の広がりを容易に指摘されます。
癌性腹膜炎・腹膜播種では、無数の癌細胞塊が腹膜表面に散布付着増殖し、もし癌の進行を抑制する治療を行わなければ、必ず腸閉塞や閉塞性黄疸を併発して死亡するか、頻回の腹水排液に伴う低タンパク血症と水分制限による重症の低栄養状態に至り、死期を早めてしまいます。
無治療や免疫療法のみで放置しておくと、大多数の患者さんは腸が複数箇所で癒着して腸閉塞状態になり、運が良ければ人工肛門を作れますが、人工肛門を作れなければ多くは2ヶ月以内の余命と宣告されます。
もし、既に人工肛門を作っている患者様の場合は、腸閉塞が再発すれば余命 1ヶ月程度となります。再発する前に、再発させないための積極的治療を一日でも早く受けることが望まれます。癌性腹膜炎・腹膜播種は制御できないと思いこんでいる医師がまだ非常に多いため、しばしば、患者よりも先に主治医が諦めてしまっている事が多いのです。これは、一人の主治医の判断だけで、その癌患者様の可能性が断たれることを意味しています。
癌性腹膜炎・腹膜播種の場合、一刻も早い専門的治療開始が患者の生死を決定します。迷っている間に、患者さんの余命は確実に短くなります。患者様本人やそのご家族が専門的治療法の存在を疑うことで、無策のまま、患者様の生命の可能性を消すことになります。
癌性腹膜炎による腹水貯留を放置しない治療方法としてCART治療方法に遺伝子治療方法を組み合わせることによって癌性腹膜炎をコントロールできます。
CARTとは、腹水濾過濃縮再静注法の略
CARTとは、Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy: 腹水濾過濃縮再静注法の略で、肝硬変やがんなどによって貯まった腹水(又は胸水)を濾過濃縮(ろかのうしゅく)して、アルブミンなどの有用なタンパク成分を回収する治療法です。
CARTの治療方法によってお腹の圧迫が軽減し、自覚的苦痛が軽減されます。
これによって、生活の質(QOL =Quality of Life)が向上します。
献血由来の血漿(けっしょう)
アルブミン製剤を補充した場合は、未知の病原体に感染する可能性は完全には否定できませんが、CARTの治療方法は、自己のアルブミンを戻しますので未知の病原体に感染する可能性がありません。
【CART遺伝子複合的治療の副作用】
発生頻度は不明ですが、CARTを行うことにより以下の副作用が報告されています。
•発熱
•悪寒(おかん)
•頭痛
•溶血
•血圧上昇
•血圧低下
•嘔吐(おうと)
•血色不良
•ほてり又は呼吸困難
•ショック
などの症状
遺伝子治療方法によっても同様の副作用が報告されています。
【遺伝子 治療方法や化学療法を 組み合わせるメリット】
腹腔内の腹水を取り除き、がん細胞や細菌などを膜処理し取り除き、自己のアルブミンを戻してあげることで、お腹の圧迫の軽減といった自覚症状としての苦痛を取り除くことや一時的な緩和的治療を目的とするだけでなく、癌性腹膜炎の治療方法として腹腔内に癌抑制因子としてp53癌抑制遺伝子産生タンパク質や時に低容量の抗がん剤を腹腔内に直接投与することによって、癌性腹膜炎を制御し腹水の再貯留、癌性腹膜炎を抑えることを治療の目的とします。この複合的治療方法によって、患者様の生活の質の向上を維持することが、CART遺伝子複合治療のメリットと言えます。